私の妹の話である。
私の妹は、12歳(小6)、9歳(小4)、1歳2ヵ月の3男の母親である。
日中は、飲食店で働いている。
三男を産む前は、その飲食店で正社員として働いていたが、出産後、さすがに夜の勤務は難しくなった。育休明けからパートにしてもらって、平日のランチ時にだけ働いている。
それでも朝9:30~15時まで働く。
帰宅してからも、家事という労働は続く。
小学生の子供たちなので、帰りは早い。
おやつを食べては散らかし、掃除や洗濯はしてもしても追いつかない。
そして宿題をしないでゲームを始めるので、怒って怒鳴って追いかけて、全く、エネルギーを消耗してばかりだ。
また、1歳の3男は、0歳から保育所に預けている。
しょっちゅう、鼻水と熱が出て、中耳炎やアデノウィルスや手足口病など、何かしらの病気になる。
その度に、仕事を休んで病院通い。そして寝不足の日々。
何だか、妹は寿命を縮めているんではないかと、心配になる。
そんなある日、妹に、ふと、一人の空白の時間ができた。
というのも、これは私の提案だったのだが、週4日のバイト日数を週3に減らすようにしたのだった。その飲食店で働く人達は、妹と同じように乳児や幼児を持つママさんが多かった。そのため、休日を設けていても、前日になると、誰かから連絡が入っていた。
「うちの子が、熱を出したので、明日病院に行きたいから、シフト変わってもらえませんか?」と。
こればかりはお互い様なので、出られそうな時はOKする。
そうして、これまで結局休みになることはなかった。
それだから、今回は、待ちに待った、何も予定のない休みだった。
私は、妹のせっかくの一人の時間の邪魔をするまいとして、昼過ぎまで音信不通にしていた。
13時を回り、さすがにどこかへランチにでも行こうかと、連絡をいれた。
「朝から何してたの?」
「ふふん~!部屋の模様替えした!めっちゃ動かした!大変だった~」
私は椅子からずり落ちそうになった。
それなら、私を呼んで二人でやれば、もっと簡単だっただろうに。
それに、せっかくの時間だ。一人でゆっくりと、以前見つけたお気に入りのカフェに出かけてコーヒーを愉しむとか、人の少ないうちにスーパーでゆっくり買い物するとか、近くの温泉に入ってくるとか、色々あっただろうに。。。
妹は、自分の時間を、自分のリラックスタイムには使わなかった。
家族で過ごすリビングの模様替えに奮闘していたのだ。
あっぱれ。
その後、私と妹はランチに出かけたが、ご馳走してあげようと思った。
ランチが遅かったので、もう妹が好きな生クリームもりもりのケーキを買う時間がない。
今日は小学生の帰りが早い日なのだ。
一個人よりも家族の中に生きる妹に、近々大きなケーキでエールを送ってやろう。
*日々の幸せに、特別なことなどいらない。