久しぶりに東京へ出張する。
駅まで父に送ってもらおうと思い、声をかけた。
「何時出発だ?お昼は?何食べたい?」
と、質問のシャワー。
私は素っ気なく
「チケットはまだ買ってない。お昼何でもいい。」
と答えた。
そして、予定していた新幹線時間の2時間も前に、私を迎えに来た。
二人で大きなショッピングモールへ行き、牛タン専門店で定食を食べた。
父は、以前混んでいて並んだ経験があったらしく、それが怖かったようだ。
父はおしゃべりではない。
食事中は、特にしゃべらない。
ましてや、透明なパーティションに仕切られたテーブルでは、正面の相手との会話が一番しづらい。
隣のテーブルの人達の会話の方がよっぽど聞こえてしまう。
さて、あっという間に昼食時間は終わり、だいぶ時間が余ってしまったが、もう駅まで送ってもらうことにした。
駅にはトイレも休憩室もお土産屋さんもある。
駐車場へ向かって歩いていた時、ふと、ショッピングセンターの出口付近で、私たちの足が止まった。
ガラス張りの向こうに、子犬たちがいた。
大きくなってしまった子犬は17万円、一番の目玉は45万円だった。
複雑―。
実家でも昔、犬を飼っていた。大学や就職などで実家には人が居なくなり、犬の最期に世話をしていたのは父だった。
(もしや、父は犬が欲しいのかもしれない。私に見せたかったのかも?)
先月祖母が亡くなり、父は実家で一人暮らしだった。
やっぱりさみしいのかもしれない。
駅に到着し、父と別れた。
私が見えなくまで、車は動かなかった。
東京から戻ったら、家族会議でも開こうかと思う。